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「ずらかるぞ」
その一言で俺は銃を下ろし男達は俺の顔をも見ずに狭い間をぞろぞろと出ていった。
口にくわえたままの煙草を取り、一息ついた。
「あ、ありがとうございます」
女は涙目になりながら何度も深く頭を下げた。よっぽど怖かったらしい。
「あんま治安が良くない場所うろつく――」
「そこの黒髪!」
言葉が終わらない内に別の誰かが俺の言葉を遮った。聞き覚えのあるような声。
「……面倒くせぇ」
俺は眉を寄せて不服そうな顔をしていたにちがいない。彼はズカズカと怒りを込めてこちらに歩み寄る。
巡査だ。見覚えのある警察官。
「星英ーっ、お前というやつは次から次へと問題ばかり」
「俺じゃねぇよ」
「今回は見ず知らずの女性を襲うだと男としてあってはならない行為」
「俺じゃねぇよ」
「前々までは泣く泣く許していたが今回ばかりは――」
「だっから、俺じゃねぇって言ってんだろ誠也!」
誠也と呼ばれた男は眉間に皺を寄せてから俺の後ろにいた女に聞いた。
「すみません、星英に何かされませんでしたか」
違うだろ。人を犯罪者みたいな言い方しやがって。
俺らの言い争いにポカンとした顔をしていた彼女は、我に帰ったように言った。
「と、とんでもございません 先程助けてもらったんです」
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