隻腕の猿

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 影になって黒く見えるのは、色の濃い生い茂った葉だ。  ……ここは何処(どこ)だ?  俺は左手に(しっか)りと『猿の左手』のミイラを握り締め、歩き始めた。  とりあえず人間をみつけなければ。  (ひたい)に汗が(にじ)む。  一歩一歩踏みしめながら歩く。  地面は湿っていて、靴を()いていても足の裏に土が吸いつくのがわかる。  彼方其方(あちこち)から奇怪な声が聞こえてくる。  高く低く尾を引く声が(こだま)する。  鳥なのか獣なのかわからない 声は、否応(いやおう)も無く不安を(あお)る。
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