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奴が追いかけてくる。
追いつかれるのは、時間の問題だ。
耳元を矢がかすめる。
頬に数滴、血がはねた。
ほんの少しだけ、先端が耳朶を掠ったらしい。
もう、駄目だ。
鏃には毒が塗ってある。
どんな小さな傷でも蛙の毒は効く。
やがて全身にまわって身動きできなくなってしまう。
次の枝を掴もうとした途端……腕から力が抜けた。
思ったより毒のまわりが早い。
俺は無様に木から落ちた。
顔に白い隈取をした呪い師が、俺の顔を覗きこんでいる。
口元には、見覚えのある薄笑いが浮かんでいた。
「私が作るのは只の木乃伊さ。
猿の左手はお前のモノだよ」
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