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溶けそうに熱い空気の中で、俺は走る。
身体が重い。
空気がゼリーの様に纏わりついてくる。
懸命に手足を動かしているのに、思うようにスピードがでない。
遅々として進まない。
まるで、夢の中でスローモーションで走っているみたいだ。
否。これは正しく悪夢そのもの。
しかし、現実だ。
奴が追いかけてくる。追いつかれるのは時間の問題だ。
耳元を矢がかすめる。頬に数滴、血がはねた。
痛みは無い。
ほんの少しだけ先端が耳朶を掠ったらしい。
もう、駄目だ。
鏃には毒が塗られている。
極彩色の蛙から摂れる毒は強い。どんな小さな傷でも確実に効き目を現す。
やがて全身に毒がまわり、俺は身動きできなくなってしまうだろう。
目の前にある枝を掴もうとした。
腕から力が抜ける。
思ったより、毒のまわりが……早い。
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