ブタさんの家

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ブタさんの家

 僕の家は、ブタさんの家と呼ばれてる。別に僕が太っているわけでも、家族の誰かが太っているわけでもないし、ましてや本物のブタというわけではない。  門扉から見える玄関前に、高さにして四十センチほどのブタの陶器の置物があるからだ。  ブタは尻もちをついた状態で、体を前へ傾けて前足で上半身を支え、何か食べ物をねだるような顔をしてだらしなく口を開いている。その表情たるや、何とも言えぬ愛嬌があり、憎めないキャラクターだ。父が酔っ払って帰って来たときにビンゴ大会で当てたとかで、数年前から僕の家の玄関前に座り込んでいる。  ブタさんの家とは、近所の保育園の子供たちがつけた名前だ。  どうやら僕の家の前が保育園のお散歩コースになっているらしく、「ブタさん、おはよー!」とか「ブタさん、かわいいー!」などという幼い声を、昼間は家にいる母がよく耳にするそうだ。
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