11人が本棚に入れています
本棚に追加
男は、集団の先頭を歩いていた、俺がぶつかったそいつだった。
赤く染まった髪、両耳に5と開けられたピアス。
まさに、ならず者を定義させるような姿だった。
風を切る音に続き、何とも痛烈で、鈍い音がした。
俺の頭部に、思い切りのフックが叩き込まれる。
拳にキレは無く、そいつが格闘技に関しては全くのド素人である事は解った。
それでも、俺の意識は痛みにぐらついた。
連日の疲労、空腹によって、俺の体力は著しく低下していた。
一発、また一発。
体に鈍痛が走る度、次第に意識が刈り取られる。
そうしていよいよ、俺もその意識を失いかけた。
鏡で見れば、焦点の合わない瞳、生気の無い瞳が映るだろう。
男は口の端を緩め、その拳を固く握る。
そして、俺に向けて構え…。
「やめてぇっ!!」
…あの大バカが。
社会勉強もろくすっぽ出来ないのか。
最初のコメントを投稿しよう!