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俺が見た少女は、一輪の花だった。陳腐な例えだが、まさにそうだった。
その花が、雑草の如き俺のために枯れ果ててしまうのが、どうしようもなく心苦しいのだ。
だから俺は…、逃げる。
もしかすると、自尊かも知れない。
だがもし、少女が俺に抱く感情が、俺が少女に抱くそれなら、少女は助けに入った俺に幻滅するはず。
立ち向かったとて、明らかに救えないだろう。
ならばこれ以上の、無意味はない。
身を呈して提示した彼女の思いを、無惨に踏み潰す結果になるのだから。
俺は這って、また這って、ゆっくりとその場を後にするしかなかった。
これが負け犬の俺にお似合いなことで、自身が滑稽だった。
向こう側で聞こえる少女の悲痛の叫びを尻目に、俺は涙していた。
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