2nd Fox「リゼク・シューリッヒ」

3/52
前へ
/57ページ
次へ
だがこれが、俺にとっての必然であり、日常であるのだから、慣れたものだ。 いちいちそれについて苦悩するなど、それこそ愚かしい。 ただ、心の底では望んでいたのかも知れない。 たった一つ、小さな変化でも、俺にはどんなに輝いて見えるだろうか。 そんな生き甲斐を、どこかで望んでいたのだろう。 俺は顔に着いた異臭の液体を手で拭い、当ても無く歩みを進めた。 「…こんな夜遅くに」 暗闇の中、背後より声が響く。 優しく、抱擁するように発せられた声。 そんな少女の声色は、久々に聞いたやわらかい物だった。 「風邪、ひきますよ?」
/57ページ

最初のコメントを投稿しよう!

11人が本棚に入れています
本棚に追加