1540年

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◇伝承◇ ───その日、ある村に白鷺が舞い降りた。 永らく不作の続いていた無名の村は、鷺の咥(くわ)えた一輪の花によって慈愛を賜り、そして豊作と叡知を授けられた。 鷺は村を発展させた事で崇められ、村人は鷺を称え社(やしろ)を奉り、更には村の名を白鷺村と改めた。 鷺は村を豊穣させ彩(いろどり)を与えた事で色神(いろがみ)と呼ばれた。 色神は村人に敬れる事で更なる豊穣の力を得て、自らの分身である六人の鷺を産み出し、更には村の女子(おなご)に自らの力の一部を授けた。 人の姿を象る鷺の民の誕生。 そして人から離れた力を有する者。離れ人。 "鷺人(さぎびと)"と"花人(はなびと)"の誕生だった。 鷺の民は人目につかぬ場でひっそりと暮らしていた。 一方、特異な力を有した女子は、様々な力を用いて村の発展に貢献して行くも、反面その力に嫉妬する男も少なくなかった。 色神の豊穣を貪(むさぼ)る異端と解釈した村人の一部は、"花狩り"と呼ばれる組織を作り出し、花人を次々と迫害した。 後に華園伝説と称される、春菊(はるぎく)と志木(しき)の悲恋は、この花狩りと共に哀しき運命を辿る。
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