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春菊は人類初の花人であった。
あらゆる者を治癒させる右手は開花の力と呼ばれ、村人はそれを何よりも重宝した。
花狩りの勢力が増して行くと、その矛先は春菊にまで及び、春菊は当時恋仲であった志木と逃避行をせざるを得なくなった。
鷺の民の中で最も人と関わりを持っていた朱(あか)は、二人の愛に感動を覚え、その逃避行の援助を申し出た。
だが、その援助が仇となり、鷺の守と呼ばれる森に身を潜めた挙げ句、春菊と志木は花狩りに放たれた火によって苦しみの末に命を失った。
鷺の民もまた、その炎によって焼け死に、その全てが死滅。
村は悲しみのどん底に包まれた。
それを誰よりも嘆き悲しんだ色神は慈愛を用い、春菊の精神を数万の花へと昇華させ、村に枯れない花と呼ばれる祝福をもたらした。
志木の精神を自らの従者へ転生させ、志木は四季に別れた四つの試練を与えられた。
試練を全うした時、二人は再び結ばれ、永遠の愛を約束される───。
伝承は、一部は真実であり一部は虚構である。
伝承は次第に薄れ、ねじ曲げられ、隠匿され、その殆どは謎に包まれてしまった。
しかし、この伝承こそが、長い長い"神話"の幕開けだったのだ───。
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