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◇◇◇
「─────」
腕で目を覆い隠していたのを解き、朝日の明かりを睨む。
憎々しい程に、太陽が私の目を視る。
もう朝だ。
22時に床に入ったのにも関わらず、眠った時間は僅か2時間。
長い間苛まれ続けている不眠症は、今日も健在だった。
瞼が重い。
目を瞑り、眼球をぐいぐいとほぐす。
眠い。けど、眠れない。
「おい霧都(きりと)、起きてんだろ?───入るぞ?」
ドアをノックもせず部屋に入ってくる闖入者。
「入って来ないでっ」
私は枕に顔を埋めて、闖入者に言い放った。気分的なものか、誰か邪魔が入る時に限って眠くなるのだ。
だから私は、相手が誰であろうと不機嫌になる。
「お前今日朝飯当番だろ、子供達が泣き出すぞ?」
「・・・」
ああ、そうだった。
だから望み薄なのに早めにベッドに入ったんだ。
「早く起きろよ。
今日も眠れなかったのか?」
「・・・ええ。その通りよ」
私は首を垂れ下げたまま上半身だけ起き上がる。
「それで、勇熊(おぐま)。
女性の部屋にノック無しで入るなんて、いい度胸してるわね」
私は溜め息と苦笑を漏らす。
いつもの事だから、一々目くじら立てて怒るのも面倒だ。
「子供達に一斉に乗っかられるよりは、いいだろ?」
「・・・ええ、全くだわ」
あの子達は相手が誰であろうが、空腹なら人を圧迫死させるだろう。
私は重い足取りでベッドから出る。
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