1973年 6月23日

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「早く作らねぇと、朝の礼拝に間に合わないぞ」 「わかってるわよ。 勇熊は洗濯当番でしょ」 「もう終わった。 俺が子供の相手しとくから、早く顔洗って飯の支度してこい」 勇熊は以外にしっかりしている。 まぁ、私も不眠症じゃなければしっかり家事をこなせるはずだ。 欠伸をしながら台所へ。 台所で顔を洗い、冷蔵庫から卵と冷凍していた食パンを人数分取り出す。 5分で出来るエッグトースト。 人数分作っても15分とかからない。庭で勇熊が子供達とはしゃいでいる声が聞こえて来た。 エッグトーストが出来上がり、私は窓を叩いて勇熊を呼ぶ。 勇熊はそれを見て、子供達を引き連れて居間へ戻って来た。 「ほら、早く席に付け。 朝飯は冷めたら不味いからな」 『はーい!!』 整った返事。ご飯時だけは礼儀がいい。 全員揃った所で、指を重ねる。 「お祈りを」 私は先導して、祈りを口にする。 『天にまします われらが父よ 願わくば御名をあがめさせたまえ───』 それを少し遅れながら口にしていく子供達。 勇熊は、子供達の手を握り、敬虔な表情で祈っている。 こういう時は、真面目だ。 幾ら眠くても、思考が鈍っても、祈りは勝手に口から出る。 『われらの日用の糧を今日も与えたまえ───』 子供達も、深い意味はわかっていなくとも、祈りの大切さは身に染み付いている。 『国の力と栄えとは限りなくなんじのものなればなり───』 「・・・アーメン」 『アーメン』
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