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「まあね。財界の人達を護る為に普通の人達に紛れさせているから、知らなくて当然なんだよ。木の葉を隠すなら森の中、の原理だね。だから迷っても別に恥ずかしい事じゃないよ、のりくん。皆一度は経験してる事だからさ」
「お前の呼び方の方が恥ずかしいんだがな」
「ところでのりくんは何か食べないの?」
いつの間にか姫小松のうどんは3分の1になっている。
「食券ならあそこで買えるからさ」
姫小松の指差す先には券売機がおいてある。
「早く行った方がいいよ。急がないとお昼休み終わっちゃうからね」
そして、俺は適当に選んだカレーライスを持って再び姫小松の前の席に座った。
「変わらないね」
俺がスプーンを持って一口目をいただこうとした時、突然姫小松が嬉しそうに言った。
「ん?」
俺は手を止める。
「だってのりくん、昔からカレーライス、特に甘口、肉と玉ねぎ多めのルーに生卵と福神漬けをかけたのが好きだったじゃない」
「かなり詳細にまで記憶してるな」
だけど、それを聞いて俺すら忘れていた好物を思い出した。
暗殺者たるもの、自分の情報はなるべく見せないように特訓した結果、好物すら忘れてしまっていた。
「そうか。これが俺の好物だったな」
「変なのりくん。だけど、のりくんが変わってなくて、また会えて良かったよ」
「…俺もだよ」
けれど、全く変わってないわけじゃないんだがな。
キーンコーンカーンコーン…
そこでチャイムが鳴った。
「あ、私は先にいくね」
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