「冒険でしょでしょ?」

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昨今の、世に言う「萌え系アニメ」の代表格として国内外に名高い評価を持つ「涼宮ハルヒの憂鬱」。 アニメーションだけでなく、音楽面でも稀有な芸術性を持つこの作品について、評論してみようと思う。 「冒険でしょでしょ?」は、そんな「ハルヒ」の記念すべき一曲目のOPソングである。 コンポーザーに冨田暁子、アレンジャーに藤田淳平を起用したこの楽曲は、抑え気味のテンポでありながら聞き手を「日常」から「非日常」へと引き込むドラマティックな展開が持ち味だ。 冒頭のボーカル、しかも転調を含むこのフレーズを三回もリフレインさせ、更にBメロの途中に接続、最後のサビへと繋げる展開には、聞く度に圧倒される。 カラオケ泣かせであることも言うまでもない。 平野綾のキレのある歌声も相まって、OPソングに必要とされる[盛り上げ]という役割を十二分に果たしていると言えるだろう。畑亜貴の作詞も申し分のない出来だ。 ここで一つ補足したいことがある。 涼宮ハルヒシリーズの全楽曲を通して聞いてみると、ある楽器のパートの存在が世界観の形成において非常に重要であることが分かる。 それはストリングスである。 弦楽の存在があるかどうか、これで、その楽曲が「日常」的な事象を描いたものなのか、はたまた「非日常」な世界を取り上げたものなのかがはっきりと区別されている。 畑亜貴の詞世界の濃厚さだけでも表現には事足りない。しかしそれを更に確実なもの、感情的なものへと仕上げていくプロセスの中で、ストリングスが担うものはかなり大きいということが分かるのである。これはキャラソンやBGMにも共通している。 ではこの「冒険でしょでしょ?」はどうだろうか。 そう一目瞭然、イントロから後奏までストリングスがこれでもかと存在感を示している。 かくしてこの曲は、 単なる一女学生の憂鬱な「日常」を描いたものから、世界を変えてしまうSOS団団長の冒険に満ち溢れた「非日常」を謳う楽曲へと、堂々たる昇華を遂げたのである。 「ハレ晴レユカイ」とは言わば対称的な存在であるこの一曲は、これからもハルヒサウンドの象徴、また中核として輝き続けるだろう。
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