夢を追うものは夢に追われて

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   † † †  俺達は翌朝、バスの運転手に肩を叩かれて重い瞼を開くことになった。  人間とは案外間抜けなもので、俺達が岩だと思って寝ていたそれはバス亭のベンチだったらしい。  どうやら、木製だと劣化しやすいため、石を削って造っていたものだったが、それも年代が経ち苔だらけになっていた。  これでは深夜視界の悪い中で見分けるのは難しい。  バスの運転手からは「二人で家出かい? お金ないんなら、街までなら乗せてやるよ」と言われて、それを否定することは出来なかった。  そして、案の定俺達はこっぴどく怒られた。  先生にもだが、特に両親にはデカイ雷を落とされて、そして泣かれた。  正直、予想していなく。本当に悪い気持ちになったが、別に後悔はなかった。  なぜなら、 「よう! おはよう」      「おはよ。標(しるべ)」  さらに次の日の朝、結舞の笑顔が俺に向けられる。俺は温かい気持ちになりがら笑顔を返す。  なぜなら、  俺に大切な人が出来るきっかけになった出来事なのだから。
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