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アサヒは、この地方では珍しく、黒い髪をしていた。
黒っぽい、という髪は見掛けるが、アサヒの髪は、本当に黒なのだ。
聞けば、東の地方の出身らしい。
「和の島っていう所だ」
と、アサヒは言った。
そういえば、ずっと東にワノシマという島があると、ルーウェンは聞いたことがあるような気がした。
「アンタをちょっと見てた。俺と組まないか?」
と言われた。
ちょっと見てた、ということは、ルーウェンの戸惑って焦る様子を見ていたということだ。
それならばルーウェンがあまり要領の良い方ではないとわかりそうなものだ。
なのに何故、と思ったが、他に相手になってくれるような人を探せるとも思えなかったので、アサヒと組むことにした。
腰に剣のようなものを下げていたので、剣を扱う科なのだろうと思った。
黒光りする細身の鞘は、わずかに湾曲しているようだ。
後に、それをスラリと抜いてみせて、カタナというのだとアサヒが教えてくれた。白く輝く銀色のそれは、片刃だった。ルーウェンの知る、両刃の剣とは違う種類のものだ。
そしてその時に、鈴をもらったのだ。
何の鈴かと尋ねたが、
「多分そのうちわかるだろ」
と言われた。
鈴は、手で振ってみても音がしなかった。
身につけておくようにと言われたので、首を傾げながら、ロッドの先にぶら下げた。
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