劣等生

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 全員の模擬試験が終わり、教官が解散の指示を出した。  リシュは、励ますようにルーウェンの肩を叩いて、寮の方へ歩いて行った。  ルーウェンも、自分の寮へ向かった。  トボトボと歩くルーウェンの後ろから、話し声がした。 「ルーウェン見たかよ」 自分の名前が出たので、思わず聞耳を立てた。 「落ちるだろ、アレ」 「ペアのヤツかわいそー」  笑い声混じりのその会話に気づかぬふりをして歩きながら、ルーウェンはロッドをまとめた紐を握り締めた。  アサヒに申し訳ないと思った。  期末試験に合格できなければ、夏季休暇はもらえない。  アサヒは休暇になったらワノシマへ帰るのだと話していた。  ワノシマは遠すぎて、長期休暇でもなければ、アサヒには帰る機会がないのだ。  その時突然背後の会話が途切れ、代わりにヒッ、という声がした。  何事かと思わず振り返ると、同じ精霊師育成学科の生徒の首に、刃物がつきつけられていた。  刃物を手にする人物は、満面の笑みを浮かべて……怒っていた。 「誰がかわいそうだって?」  そう言ったその人物は、アサヒだった。
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