劣等生

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「ア、アサヒ!」  カタナを当てられていない方の生徒が、後ずさって叫んだ。  アサヒは精霊師育成学科では、ちょっとした有名人だった。  まず長い黒髪が目を引く。  見慣れぬカタナも目立つ。  そして何より、「落ちこぼれルーウェンの相方」。  アサヒは剣術師育成学科の中でも群を抜いて実力があったので、ルーウェンと組んでいることが、更に注目を集めた。  ルーウェンが呆気にとられて見ていると、 「どーもどーも、ルーがいつもお世話になりまして。……で、陰口を叩いたのはアンタかな?」 笑みを絶やさぬまま、アサヒが言った。 「じ…冗談!冗談だって!」  カタナを当てられていない方の生徒が、慌てて言った。  カタナを当てられている方は、青ざめて声も出せない様子だった。 「あ、そう。じゃあ俺も冗談」  アサヒはそう言って、日の光を反射して白い輝きを放つカタナを鞘に収めた。  「じゃあ」って何だ、とルーウェンが心で呟いていると、何もなかったかのようにアサヒが歩いて来た。  脅された二人は――正確には刃を当てられた方は――腰が抜けて立てないようだった。
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