劣等生

2/13
前へ
/63ページ
次へ
 ルーウェンは、ため息をつきながら国立クイ学園の、タイルが敷かれた廊下を歩いていた。  これから、精霊術の授業がある。 「よう、ルー」  愛称を呼ばれ、規則正しく並ぶ正方形のタイルに向けていた目を上げると、学友のリシュが、片手を挙げて歩いて来た。  リシュとは、入学時からの付き合いだ。  同じ精霊師育成学科では、唯一仲が良いと言える友人だった。  肩ほどまで伸ばした髪を、右に寄せてまとめている。 「やあ、リシュ。……その髪、暑くないの?」  ルーウェンは力なく返事をして、憂さ晴らしをするように、リシュの髪に文句をつけた。  リシュは呆れた顔をして、 「精霊師になろうってヤツが短髪って方が、どうかと思うけど」 ルーウェンの憂さ晴らしをさらりとかわした。  至極もっともなリシュの言葉に、ルーウェンの憂いは更に増した。  八つ当たりのつもりが、返り討ちに遭ってしまった。  ルーウェンは、自分の髪を指先でつまんでみた。  一応入学してからは、伸ばそうと努力しているのだが、慣れないからか少し伸びると邪魔で、つい整えてしまう。  またため息をついて、ルーウェンは自分の髪を離した。  金の髪が、ふわりと揺れて戻って来た。
/63ページ

最初のコメントを投稿しよう!

423人が本棚に入れています
本棚に追加