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リシュの言う通りなのだ。
精霊師は髪を伸ばすものだ。少なくとも、未熟なうちは。
精霊術は、その名の通り精霊の力を使うための術である。
精霊術を使うには、精霊と契約をしなければならない。
契約には二種類の方法がある。
一つは、「呪文契約」である。決まった呪文を唱え、それによって精霊の力を借りるもの。これは、長年精霊と共に暮らしてきた先人たちが確立した方法で、言わば人間と精霊との契約である。その呪文を捧げることにより、その対価として、精霊が見合う力を術者に与える。
もう一つは、「自動契約」と呼ばれる方法である。呪文契約が人間と精霊との契約だとすれば、自動契約は個人と精霊との契約である。呪文契約の「呪文」に当たる「何か」を、術の代価として捧げる。「何か」は、契約する個人や精霊の趣向、能力によりそれぞれ異なる。一般に、髪が使われやすいと聞く。
呪文契約は、精霊術の初歩中の初歩に過ぎぬから、精霊師としてやっていくつもりならば、自動契約は必須である。
例えば瀕死の重傷を負った人間に、治癒の術を使おうとした時、長ったらしい呪文を唱えていたのでは、間に合わない。
だから、精霊師は自動契約を結ぶのだ。
そして、その為に髪を長くしておくのだ。
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