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「でも僕は、契約に髪を使うと決まったわけじゃないし」
ルーウェンは負け惜しみのように、言った。
リシュがいよいよ呆れた顔をした。
「後期からは自動契約の授業に入るんだぜ? 自動契約の基本は髪だろう」
言われなくてもわかっていた。
何故精霊が人間の髪を好むのかはわからないが、とにかく長い髪なら契約を結びやすいのだ。
それも、髪が美しければ美しいほど、彼らは喜ぶ。
「でもまあ、その前に呪文契約をマスターしないとな」
リシュがルーウェンの憂鬱に、更に輪をかけた。
前期の授業は、呪文契約だった。
精霊との契約を結ぶ、基本中の基本の、更に基本。
精霊との繋がりを感じ、精霊の方にも存在を示す。
これがなくては始まらない。「はじめまして」と挨拶をするようなものである。
しかしルーウェンは実習において、一度も成功したことがなかった。
ルーウェンはまだ、「はじめまして」も言えないのだ。
「今日は成功するといいなあ」
リシュが、励ました。
話しながら歩き、二人は石の壁の授業棟から出て、屋外訓練場へと着いた。
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