劣等生

4/13
前へ
/63ページ
次へ
「でも僕は、契約に髪を使うと決まったわけじゃないし」  ルーウェンは負け惜しみのように、言った。  リシュがいよいよ呆れた顔をした。 「後期からは自動契約の授業に入るんだぜ? 自動契約の基本は髪だろう」  言われなくてもわかっていた。  何故精霊が人間の髪を好むのかはわからないが、とにかく長い髪なら契約を結びやすいのだ。  それも、髪が美しければ美しいほど、彼らは喜ぶ。 「でもまあ、その前に呪文契約をマスターしないとな」  リシュがルーウェンの憂鬱に、更に輪をかけた。  前期の授業は、呪文契約だった。  精霊との契約を結ぶ、基本中の基本の、更に基本。  精霊との繋がりを感じ、精霊の方にも存在を示す。  これがなくては始まらない。「はじめまして」と挨拶をするようなものである。  しかしルーウェンは実習において、一度も成功したことがなかった。  ルーウェンはまだ、「はじめまして」も言えないのだ。 「今日は成功するといいなあ」  リシュが、励ました。  話しながら歩き、二人は石の壁の授業棟から出て、屋外訓練場へと着いた。
/63ページ

最初のコメントを投稿しよう!

423人が本棚に入れています
本棚に追加