劣等生

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 訓練場は、金網でいくつかに仕切られており、他の区画には、別の学科の生徒たちが見えた。  ルーウェンたちのいる場所は、初級用の訓練場なので、彼らもきっと初等部なのだろう。  国立クイ学園は、国が人材育成のために創設した学舎である。  全体の敷地は広く、ルーウェンはまだ学内の全てを見たことがない。  ルーウェンが足を運ぶ建物は、初等部の授業棟と寮棟、図書室のある資料棟くらいだった。中等部、高等部の授業棟にいたっては、目にしたこともない。  しかしきっと、建物自体は初等部とほとんど差異はなく、石の壁と正方形のタイルで出来ているのではないかと思う。  クイには学科も無数にあり、やはりこちらも、ルーウェンは把握しきれていない。  ルーウェンにわかるのは、精霊師育成学科と、剣術師育成学科と、体術師育成学科と、癒術師育成学科と、物使師育成学科と……それだけでも挙げればキリがないので、ルーウェンは指を折るのをやめた。  とにかく無数の専門学科のうちのどれかということだけは確かだ。  訓練場に、指導教官が現れ、授業の開始を告げた。  集まった生徒たちは、それを合図に雑談をやめ、できる限りの静寂を作った。  そして教官が口を開いた。 「今日は、呪文契約実習の最終確認です」  ルーウェンは、深々とため息をついた。  今日が終われば、次に訓練場に来る時には、期末試験だ。  地面を、見るともなしに見つめた。訓練場への通路には石が敷いてあるが、中は平らな土だった。  土は生き物を育む母親のような存在であり、以前のルーウェンは柔らかに抱擁されるような感覚をよく感じたものだが、今は、母親というより冷たい顔をした知らない人のように見えた。
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