劣等生

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「では名前を呼ばれた順に、このロウソクに炎を点すこと」 教官が言った。  これは、期末試験の模擬テストだった。  筆記試験とは違い、実技試験は、実力があればできるし、なければできないので、こうして予め試験内容を知らせても全く差し支えはない。  今日できなくても、当日できれば、それでいい。合格だ。  ルーウェンは、浮かない顔のまま、ロッドを組み立てた。  クリスタルのロッドは、持ち運びしやすいように、ちょうど人間の肘から手首くらいの長さに分割できるようになっていた。  使いたい時はそれぞれの結合部を合わせてやれば、ルーウェンの肩ほどの高さの円筒形の棒になる。  あまりそういう機会はないと思うが――むしろあって欲しくないが――、いざとなれば棒術の棍の代用品としても使えそうだ。棒術に使うには、いささか短すぎるかもしれないが。  精霊は、クリスタルの持つパワーにも惹かれやすいので、ルーウェンはこれを使っている。  ロッドの断片は、あっという間に透明色の一本の棒になった。  元々結合部は、互いに引き合うようにできているので、分割片をまとめて縛っている紐をほどいてやればそれでよかった。  一応準備のできたルーウェンは、自分の番を待ちながら、他の者の様子を眺めていた。  名前を呼ばれた者は皆、教官の用意したロウソクに、炎を点している。  一度も成功したことがないのは、ルーウェンだけだった。
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