劣等生

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 無事に模擬試験を終えたリシュが、声をかけてきた。 「本試験までとにかく練習するしかないな」  ルーウェンは、うん、と生返事をしてロッドを片付けた。  練習なら毎日寮に戻ってからしている。 ――何が足りないんだ。  ルーウェンは、心の中で独りごちた。  ところで、とリシュの声がしたので、ルーウェンは顔を向けた。 「ずっと思ってたんだけど、それ……何?」  リシュの指差す先には、すでにまとめられたロッドの分割片の先にぶらさがっている、鈴があった。  ルーウェン自身にも、この鈴のことはよくわからなかった。 「アサヒにもらった」 とだけ、答えた。  アサヒは、ルーウェンのペアの相手だ。  クイでは、入学と同時に誰かとペアを組まなければならない。  そしてそれは原則的に、卒業するまで離れることができない。  ペアの相手とは運命共同体と言っても良かった。  例えばもしもルーウェンがこの試験に落ちて、補習を受けなければならなくなったとして、その場合にはアサヒの夏季休暇もなくなってしまう。  ルーウェンは嫌な想像をして、頭を振った。 ――受からなくては。
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