ep1*

3/4
前へ
/8ページ
次へ
「お母さんになんて説明しよう…。」 美都は小さい頃からの夢を叶えるチャンスを得たものの、女手一つで育ててくれた母へ罪悪感を感じていた。 “三ツ木橋~、三ツ木橋~お足元お気を付けてお降りください” 美都の通う学校の最寄り駅に電車が到着したようだ。 電車から降り、自動改札機を抜けて学校へと歩く。 一日授業を受けたものの、頭の中はこれからどうするかをずっと考えていた。 やがて学校も終わり、軽く友達と挨拶を交わして来た道を帰った。 ――――…… 家の前まで来ると、今日の夕飯を作っている匂いが辺りにやさしく漂っていた。 扉の前で目を閉じる。 ――ちゃんとお母さんに話して分かってもらおう。 美都は扉を静かに開けた。 「おかえりー。」 いつもと変わらない明るい声。 「…ただいま。」 「どうしたの?」 いつもと様子の違う娘に母は問い掛けた。 「……話があるの。」 母は夕飯を作る手を止め、美都に向き合った。 「なに?」 「……この間、オーディションを受けたの。」 母は一気に表情を変えた。最初は驚いていたようだが今は美都を冷たい瞳で見据えている。 「……それで?」 「受かったよ。1年間東京の養成所で勉強してからデビュー出来る事になったの!私、夢が叶うんだよ!」 「…………そう。良かったわね。」 感情のこもらない声で母は言った。
/8ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加