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四月中旬に俺は蕾をぽつぽつと咲かせる。
山奥にあって人があまりこない場所だった。
だが、ある年になって人が沢山くるようになったのはある女のせい。
綺麗に咲き誇る桜だと言ってテレビに写真を投稿したのだ。
その年から、毎年桜を見にくる人間が増えた。
しかし、その女は俺を毎日のように見に来るのだ。
他の人間とは違いまだ、花を咲かせられない冬も、葉桜になった夏も、葉が散って行く秋も欠かせず見にくる女なのだ。
だが、女は俺に謝るのだ。
「ごめんなさい、私のせいで……ごめんなさい」
と謝るのだ。
そう、見にきた人間はゴミを捨てていき、地を踏み固めていき、花見だの夜桜だのと言って常に明かりがついている様になった。
その事について、女は俺に謝るのだ。
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