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そして、この2国の対立を更に深いものにしている要因がもう1つ存在する。
国境を接する2国は大陸の北限に位置し、西側のレイグル、東側のバラフト共に、国土の北側は沿岸――無論、その先は海ではなく空――である。
この2国が成す沿岸は内陸に向かい大きく窪んだ湾を形成しており、その湾には大陸周辺で唯一の別の大地、小さな島が浮かんでいる。
コモンと呼ばれるこの島には同名の小国が存在しており、この場所こそが、大陸共通教の教典における聖地、神との約束の地なのである。そこに存在する大司教を冠した朝廷と呼ばれる組織は、大陸全土への宗教的影響力を持っていたが、件の戦争に関しては一貫して静観の構えであった。
そのような聖地の膝元であるが故に、2国の対抗心はより強いものになっているのだ。
開戦より27年。その間、一体どれだけの命が失われ、一体その何倍の哀しみと憎しみが生まれただろうか。今、例えどちらかが停戦の申し入れをしたところで、その連鎖を断ち切ることなどできはしない。
そう、戦争は更なる長期化、泥沼化の様相を呈している――。
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