第六夜

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「……人の話を聞かなかった罰として、暫くこのまま」 「…っ!ふぇぇえ!?」 少しだけ不機嫌な声がしたかと思えば、ぎゅう、と背後から回された腕に力を込められて情けない声を上げた。 途端、香水ではない匂いが鼻をかすめる。それは今までに嗅いだことのない男の人の匂いだった。ちょっとだけ汗の匂いと、甘いお菓子のような……ジュースの香りかな。 「………っ…」 瞬間、それを意識したら、身体中の熱が沸騰したように熱くなって。恥ずかしくて堪らない。自分の現状を忘れて腕の中、もがいた。 「や、ちょっとニャンコさん…!」 しかし足先が地面についていない不安定な状態なまま、抱きしめられて上手く抵抗出来ない。それどころか端正な顔を肩へと埋められた。 「んー、ウサギちゃんってイイ匂い……あったかいし………柔らかいし」 「、!あ、」 心地よいとばかりの声が耳元で囁かれ、彼の腕が胸元辺りに触れているのだと気付く。そこでどうしようもない熱で、耳まで真っ赤になるのに自分でも気付いた。 「…ちょ、お前ぇぇええ!?何、お嬢様にセクハラしてんだぁ!ゴラァアア!?離せー!!」 それまで黙っていた兎が私の異変に気付いたのか、声を荒げる。ポケットに入ったままでは威勢もないが、いつもは小言ばかりの声が今回ばかりは救いの声に聞こえた。 「あー、何も聞こえないなぁー?」 「聞こえてるじゃん!!とりあえずお嬢様を離せー!!はげー!」 「………やっぱり暫く、このままね」 「…嘘です!!ハゲてません!後生ですからお嬢様を離して差し上げて下さいまし!後生ですからぁぁああ!」 「……チッ、仕方ないなぁ」
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