第一夜

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「あ!白兎さん」 刹那、反射的に己の席に戻ろうとしていた同級生の一人が振り向きざまに私の名を呼ぶ。その未だ呼ばれ慣れてない名前にぎこちなさを覚えながら顔を上げれば、先程とは違った真剣な表情で彼女は私を静かな瞳で見つめていた。 そうして少女は何か秘密を口にするように、小さく言葉を囁いた。 「黒い猫を見つけたら、逃げるんだよ?」 まるで何かの忠告のように。 「え?」 猫? ぱちり、と瞬く。 いまいち言われた言葉の意味が理解出来ず、意味を問い掛けようとしたが同級生は席に着くと、こちらを再び振り返ることはなかった。そうしている間にも二時間の授業が始まり、話すチャンスをなくしてしまった。 そして授業を受けることに没頭していた私の頭は見事に、その忠告を忘れていた。
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