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あの日も、ここから眺めていた。 夕暮れ、遠く、小さくなっていく鉄の箱を、この橋の上から眺めていた。 見えなくなるまで、ずっと、ずっと。 「ぁ……くん」 誰かの名を何度も何度も呼びながら、俺は泣いていた。 母親に手を引かれて帰ったのを覚えている。 「ねぇ、……くんはいつ帰ってくるの?」 名前は思い出せない。 しかし俺はそいつと余程仲がよかったのだろう。 「あんたが大きくなったらね」 母親はそう言った。
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