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別れを告げた時、亮君はなかなか首を縦に振らなかった。
でも、仕方がないから。
子供ができちゃった以上、亮君はその子や女の人を支えなきゃいけない。
愛情を注がなきゃいけない。
それにこんな関係、いつまでも続く筈はなかった。
ちょうどよかったんじゃないか。
そういうと亮君はもう一度謝って、ゆっくり小さく頷いてくれた。
本当は一緒に居たかったけど、前に進まなきゃいけない。
そう自分に言い聞かせた。
何度も眠れない夜はあったけど、それを乗り越えてきた。
何とか少し亮君を諦めてきた頃に届いた2人の結婚式の招待状。
そして添えられた写真には、その時にデキたと思われる赤ちゃんが写っていた。
[名前は、貴っていうねん。
これからはお前を愛することはできへんけど、貴に目一杯愛情を注ぐから。]
書き込まれたメッセージに涙が滲む。
最後の俺に対するメッセージ。
愛の籠もったメッセージ。
そしてこれからは、俺の名前の一部をとって名付けられた子に愛が注がれるのだろう。
伝わる優しさにまた一筋涙を流し
「亮君、ありがとう」
と、もう呼べない呼び方を最後に、
感謝の言葉を呟いた。
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