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カツン、カツンと長く暗い廊下に彼の足音がこだまする。
ソウスケは疑問に思う。たしかに最近危険な任務が自分に回ってきている。それはもう、一歩間違えれば命を落としてしまいそうなレベルの。
(それがなんだと言うんだ)
ソウスケは笑う。これがARiAに近づくための試練なら甘んじて受けよう。もし仮にARiAが自分を消そうとしているなら、望むところだ。
(消されるか、尻尾をつかむのが先か……っと)
そうこうしている内に、目的地の目前まで来ていた。局長室。忌々しいあいつがいる部屋だ。
自動ドアに近づくと、センサーがソウスケをスキャンし始めた。瞳孔、骨格、血管の分布などから、個人を特定される。
やがて、機械音と共にパシュと扉が開いた。
部屋には、あの男しかいなかった。
「やぁやぁ。早かったね」
白衣に黒縁メガネ、ボサボサの髪、やつれた顔。上司の要素が欠片も見付からない、この男性こそが、ソウスケが所属する支部のてっぺんなのだ。
名は桐生シンラ。熱狂的なARiA信者で、そのお陰で局長の座に上りつめたような男だ。
そもそも、組織の大部分はARiAによって運営されている。任務の発注や各種情報、人員の管理などがその対象で、実を言えば上司などあってないようなものだった。
しかし、何事も体裁が必要である。上下関係のない組織はまとまりを失い自壊する。そう判断したARiAは、とりあえず熱狂的な信者を各支部の長に指名した、というところである。
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