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「が……あっ……!?」
体の内部から、ボキリと嫌な音が聞こえた。
それでも、彼を踏む何者かは、力を緩めようとしない。むしろ先ほどより強く、男を踏みつけた。
ギシギシと身体中が悲鳴を上げるのを、男は朦朧とする意識の中感じていた。
やがて、背中の重圧が消えた。足が上げられたらしい。だが、男に安堵の表情などなかった。
男を踏みつけていた者が、着ている黒を基調としたコートから21世紀での携帯電話のような機器を取り出した。ホログラムで映ったものを、指でスクロールさせ、そして口を開いた。
20代半ばの、青年のような声だった。
「お前で間違いないみたいだな。……何か、言い残すことはあるか?」
青年は言いながら、腰のホルスターからオートマチックのハンドガンを抜き取り、一発弾丸を装填させた。ゆっくりと動かされたそれの銃口は、男の脳天に定められている。
男は少し笑い、こう言い捨てた。
「……人、殺しめ……」
一秒後、青年の前には真っ赤な花が咲いた。
「ミッションコンプリートだ」
青年は襟に仕込まれた極小無線機に淡々とそう告げた。彼の耳に差されたイヤホンからは、陽気な声が返ってきた。
『はいはーい、こっちも首尾よくいったよ。Fー273地点で回収するから、遅れないでね~』
「……了解」
青年はボソリと言うと、死体を放置したまま、夜の街へと姿を消した。
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