2147年

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(これじゃ、前と同じだ……)  世界中で起こる抗争。尽きぬ憎しみの連鎖……。ARiAで救われた世の中は、ARiAによって破壊されようとしている。  しかし、神という存在を得た社会は、なかなかそれを手放そうとはしない。だから、今こうして毎日のように悲劇が繰り返されていた。 (もしARiAがこの状況を見越していたとしたら──)  ──ARiAは救いの神などではなく、悪魔の化身だな、という言葉をソウスケは飲み込み、また煙草を口にした。  彼はエリア9にある信仰側の軍事組織に所属している。信仰側と言っても、彼自身はどちらかと言えばアンチARiA派に近い。  それでも信仰側の組織と行動を共にしているのは、そこからARiAに繋がる手掛かりをつかめるかもしれないという、淡い希望があったからである。 「お、いたいた」  ソウスケの背後で突然声が上がった。顔を見ずとも判る。彼と同期の日向リョウだ。  リョウはソウスケの口元に煙草があるのを見て、呆れ顔で口を開いた。 「ったく、また煙草かよ。今のご時世、そんな嗜好品たしなんでんのお前くらいだぞ?」  リョウの言う通り、今となっては煙草など旧世代の遺物に過ぎない。最近ではお目にかかることも稀だ。
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