桜と紋白蝶

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   わたしも貴方が好きでした。  貴方が泣いてやってきたその時に、どれだけ胸を痛めた事か。  他の女性へ恋心を抱く貴方の姿に、どれだけ嫉妬を抱いた事か。  言葉の一つも掛けられず、ただ舞う事しか出来ない自分に涙しました。  けれど舞う事すら出来なくなった今は、もっと辛いのです。  見て下さい、わたしの腕を。  乾いて、皺だらけで、骨しか残っていません。  見て下さい、わたしの足を。  杖をつき、支えなければ立つ事すらままならないのです。  舞うどころか、生きる事すら。  もう、一人きりでは難しいのです。  わたしはもう、あの頃のように咲き誇れません。    貴方がわたしを待つのなら。  わたしを待って、塞ぎ込むなら。  せめて、伝えたい。  わたしはもう死にます。貴方に寄り添う事は出来ないと、伝えたい。  ――あぁ、けれど。  言葉を知らぬわたしには、どうして伝えたらいいかも分からない。  誰か、わたしを助けて下さい。  どうか、愛しいあの人に、わたしの想いを伝えて――  
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