桜と紋白蝶

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   ある日の事でした。  おじいさんが家の周りを散歩していると、一匹の野良猫を見掛けました。  猫は白い身体を低くして、花に止まる紋白蝶をじっと見つめています。瞳はらんらんと輝き、鋭い爪で、今にも紋白蝶を引き裂きそうです。 「こら、駄目だろう。面白半分で紋白蝶を襲っちゃいかん」  可哀想に思ったおじいさんは、猫を叱ると抱き上げました。  猫は不服そうに鳴きましたが、おじいさんの腕の中が心地良かったのか、すぐに大人しくなりました。 「よーし、いい子だ」  それでも猫の視線は紋白蝶。蝶は飛び立つと、おじいさんの周りを舞って、飛んでいきました。 「あの蝶は、どこに行くんだろうなぁ? なぁ、猫」  猫が、あまりにも紋白蝶を見つめていたから。  おじいさんも気になって、紋白蝶の後を追いました。  
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