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「ハァ……ハァ……ハァ……ッ……!」
走る、走る、走る、走る。何処に行くのかも分からない。ただただ私は走るしかなかった。息が切れようとも、身体が重く感じようとも私を逃してくれた家族や村人の為に生きなければならない。だから私は逃げる。
辺りを見渡せば灼熱の炎。家だったものは焼け崩れ、黒い炭に変わり果てていた。
「おい、居たぞーっ!! 囲め囲め!」
「…………ッ!」
一人の男に見つかり、近くに居た男達がいつの間にか私を逃さないよう囲んでいた。
「穢れた妖怪め、殺してやる!!」
「そうだそうだ! 人間の姿なんてしやがって、化け物のクセに」
一人の男が自分の手に持っている槍を構えると、一斉に他の男達も構え始めた。その時、私は確信した。――ああ、死ぬんだなって。
今思うと、何で私が殺されなければならない――なんて思っていたけれど、それは当然だわ。だって私は人の心を読める化け物だもの。
だから、しょうがないことね。
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