Ⅳ デュー×ノワール"美女と野獣。"

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"美女と野獣。" 俺が目覚めた時にはまだ心臓が脆い鉄の塊みたいなモンで、三十秒の簡単な運動で胸が痛み、造られた鼓動はおかしなリズムを刻んだ。 棄てられたのは同じ理由 ――…動くこともままならない体じゃ、戦うなど到底無理で使いモンにならねーって。 放っておいてもそのうち勝手に死ぬだろうって決められて、曇り空の下に棄てられた。 もう死ぬなら、最期に空をちゃんと目に焼き付けたい…―― 目を開けたら、逆光で闇のように見える"そいつ"が、俺の頬に手を当てた。 「おいで」 どれだけその言葉を待っていたことだろう…。 「デュー、起きなさい」 何がどうなった? よく思い出せないな… 「早く起きてください、寝坊ですよ!」 「ソルシエール、許可するからぶん殴りなさい」 「私には出来ませんよ。ノワールじゃあるまいし…痛いっ!」 「何様のつもり?軟弱者」 誰だっけ…? ああ、そうか…俺の上司だよな 「乱暴ですねぇ。私はブリッジで仕事がありますから、後は頼みますよ」 「逃げるなっ!こら、ソルシエールっ!」 目を開けると、走って逃げ去る副指揮官の後ろ姿と、彼を目で追って怒る総指揮官の後ろ姿。 「ああ、目が覚めたのね。寝坊よ、デュー」 「…デュー?」 「貴方の…J-09の名前。デュー=ルー…"神狼"って意味なの」 上半身を起こすと、総指揮官は俺の左胸を指差す。 「前のより新しい型番の人工心臓を入れたわ。これで貴方も普通の生活ができるはずよ」 「…ありがと」 手術台から降りようとすると、鈍った体が悲鳴を上げて、再び手術台に戻らざるをえなくなる。 「まだ無理そうね。寝ててもいいわよ」 「――…総指揮官」 「なぁに?」 「…副指揮官と、その…恋人なのか?」 俺が突飛なことを言ったみたいで、ノワールは笑った。 「天パに興味ないわ」 「………」 「あの子はずっと私について来てくれてるから…一番助けられてる"だけ"よ」 「…………」 「あの子にはリコルヌがいるしね♪」 「……………」 その時の気持ちは憧れであり、"聖母"に対する敬愛だったのだろうと思う。 俺だけの心臓を造られ入れられた時、俺にはあいつしかいないと気付いたから…―― 「何ニヤニヤしてんのよ、気持ち悪いわね」 手術道具を片付けるフェーを見たら、そんな風に言われた。 「冷てーなぁ。ま、そんなトコが可愛いんだけど」 END
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