Ⅴ フェー×ノワール"繊細、ときに。"

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"繊細、ときに。" ――…人工物。 あたしの名前なのかなぁって勘違いしそうなくらい、ずっとそう呼ばれてきた。 具体的に言うと、左の腕と左の脚。 それが"目覚めた"時に動かなくなったから、代わりに義手や義足をつけただけ。 あたしは体の一部を造ってくれた技術者が大好きだった、彼は決して悪い人間じゃなかったと思う。 娘のように可愛がってくれて、あたしが困る時にはいつも傍にいてくれた。 あたしが処分されるまでは…―― 「どうして外したの?」 「この手足は、人間が犯した罪の象徴なのよ。これを着け続けるのは貴女も辛いでしょう?」 垢抜けないような素朴なあたしとは対照的な、トップモデルとも争えそうな美女。 彼女は確かに正しいことを言う…やっぱり総指揮官だから。 「…分かってない」 「え?」 「あたしの…あたしの宝物を返して!返してよぉ!」 無我夢中で手を伸ばしたら、隣に座っていた天使の技術者が怯えて部屋から逃げ出した。 あたしは…人間はおろか、繊細な天使達にも馴染めない。 「貴女がこの手足の製作者を慕っていることは知っているわ」 「じゃあ…なんで!」 「殺されたの」 冷たい棘のような言葉…。 「殺された…誰が……?」 「貴女に――天使に近付きすぎたっていう勝手な言いがかりで、これの製作者は……」 彼女には嘘をつく理由もない。 だから信じられた。 「あたしが…自由になったら、お父さんになってくれるって…約束……して………っ!」 「じゃあ、V-13。私と約束しない?」 「……?」 ノワールは笑って、あたしの頬を伝う涙を拭う。 その柔らかい声に包まれて、あたしは生まれて…"目覚めて"初めて、胸の奥が暖かくなる感覚に包まれた。 「私がお母さんになるわ。ここに住む天使達は皆、貴女の兄弟よ。ずっと変わらない"家族"…そう約束するわ」 「……っ!」 「貴女はこれからフェーよ。"妖精"って素敵じゃない?」 「さすがはフェーね」 機械を造ることも、医者のように診察や手術をすることも、あたしにとっては簡単な仕事。 資料作りや会計も、簡単すぎて笑えてくる。 他に誰もできない訳じゃないけど、ノワールはいつも大袈裟に誉めた。 「この団体も、フェーがいないと成り立たないわね」 「よく言うわ」 「本当よ。頼りにしてるんだからね、私の可愛い妖精ちゃん♪」 「…今更でしょ、ノワール」 END
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