Ⅱ ソルシエール×ノワール"花嫁と盟友。"

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"花嫁と盟友。" 私には見えるものと見えないものがある。 "目覚めた"…いや、ヒトから天使に成った時から、私の左目は暗闇しか映さない――隻眼という身だ。 人間が犯した罪…私の無き紅色の左目はその象徴だった…―― 「怪我…少しはよくなった?」 医務室のベッドに入っている私は、酸素マスクを外さないで右目元だけで笑う。 彼女は複雑な表情で曖昧に微笑むと、ギブスで固定された上に包帯で巻かれた私の手を握った。 「…ソルシエール」 柔らかい声音で私の名を呟き、彼女はそのまま俯いて黙り込んだ。 私は酸素マスクを外す。 「どうかしましたか?」 「……救えなかったの。生き残ったのは貴方だけよ」 研究所の警備員…軍人に近い彼らと真っ向から戦うはめになった私達は、あらゆる弾丸や光線をかいくぐって帰還した。 私は、大きな艦が余る僅かな人数の団員の大半と共に任務へ出たが、意識まで無事に戻ったのは私だけだった…―― 「…すみません」 「どうして貴方が謝るの」 「私は…気が付いたら仲間の下敷きになっていて…何も出来なかったから……」 起き上がった私がその時のことを詳細に語ると、彼女は首を左右に振った。 「もう言わないで」 伸ばされた彼女の細い腕が、私の体を抱きしめる。 「――…貴方が生きていてくれて、本当に……」 私と幾歳も変わらないだろう、保護団体の"聖母"は、震えながら呟いた。 「もう二度と、こんな悲しいことは起こさないわ…!」 「……はい」 モニターと手元の紙束を代わる代わる見る彼女の横顔は幼さをなくした。 今や美しい金髪も長く伸びて、誰もが羨むような"大人の女性"だ。 いつも疲れていて悲しそうな貌ばかり見せていた"聖母"は、あれから多くの天使を守ることで、ずいぶん変わった。 「――…ね、ソルシエール」 「はい、ノワール?」 私達しかいない夜のブリッジには驚くほど響く彼女の声。 「仕事中に見とれてるのは私かしら?それとも頭の中のリコルヌ?」 「ふふ…急に何ですか」 「また資料の数が足りないわよ!?一体どういうこと!?」 「それはデューが提出しないからであって、断じて私の責任では…!」 「しっかりせかしなさい、貴方は副指揮官でしょ!」 私は副指揮官であり、生き残ることのできた唯一の"黒の花嫁"の盟友ですから、守りたいのです…天使の未来と、彼女の平穏を…―― END
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