Ⅲ リコルヌ×ノワール"魔術師の魔法で。"

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"魔術師の魔法で。" 私は魔法にかかったのです。 貴方の妖艶な紅色の瞳が私を見つめるたび、私の胸は恋しくて愛しくて高鳴る…―― 冷たい空気が張り詰める"牢獄"のような"個室"。 私はそこの一室に独り閉じ込められて、何もかもどうでもいいと思いながら生きていた。 ある日、毎日変わらない静寂を裂き、とうとう彼は現れた。 「I-22、迎えにきました」 「むかえ?貴方は…?」 「"魔術師"です」 後々に、"魔術師"とは彼の名"ソルシエール"の意味なのだと知った。 「貴女の名前はリコルヌよ」 「リ……?」 「この世のものではない程に美しい"一角獣"のこと。貴女にぴったりでしょう?」 ノワールと呼ばれる総指揮官はにこりと笑うと、会議室の戸口脇に立ったままの彼を手招いた。 「今はあまり人員がいないの…――前の戦いで多くの仲間を喪ったばかりでね」 「………」 「ソルシエール、リコルヌの事は貴方に任せるわ。面倒みてあげて」 「はい」 「ここが分からないんですが…」 「今日のお昼は一緒に食べませんか?」 「ティータイムは私と!」 「原稿の確認をお願いしますっ」 長く団体にいて信頼も厚い彼は、いつも部下…とくに女性団員に取り巻かれている。 彼女達は仕事の都合の場合と、単に彼の甘いマスクや紳士的な対応に酔っている場合があって、大概は後者だ。 私は彼に近付きたいと思っても、他の女性団員のような明るさも派手さも無く内向的で、いつも離れた所から見守るだけだった。 「声、かけないの?」 「えっ?」 背後から声をかけた主を振り返ると、ノワールが微笑みながら立っていた。 「天使の未来は見えるのに、自分の恋愛占いはできないの?予言者さん」 「――…ソルシエールは、皆に優しいですから」 「だから?」 「その優しさは、天使に向けられたものです。誰か一人ではなく…――」 私が辛辣に言うと、ノワールは隠しもせずに笑う。 「何故笑うのですか!」 「意外だな~って」 「え?」 「あの彼を見てそう言うのね。貴女、鈍感?」 ノワールが指差す方を見ると、女性団員達をかわして此方へ駆けてくるソルシエールがいた。 「リコルヌ、行きましょう!」 「!?」 「見せたいものがあります!中庭へ!」 植えてくれた沢山の薔薇は、いつの間にか枯れて無くなってしまったけれど、貴方への思いは咲き続けます…――これからも。 END
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