非日常よ こんにちは

3/5
前へ
/12ページ
次へ
「お おまえなら鬼原であろうと、鬼であろうと勝てるだろ!」 「いや、鬼原に勝てる奴なんていないと思うんだが…」 そんな話をしながらも、男子生徒は一つ一つ部屋の扉を調べ、開いている部室がないか探している。 今のところ鬼原の姿は見えないものの、おそらくすぐに階段をのぼってくるだろう。あまり時間をかけて探す余裕はない。 「あ あった!コウ、この部屋だ!」 ようやく開いている部屋を見つけ飛び込む。その部屋は使われていないらしく、机だけでなく掃除用具箱すらなかった。隠れたところで見つかるだろう。鬼原が二階にくるのが遅いのは、一階の部屋を片っ端から調べているからだ。つまり今隠れている部屋も調べられることになる。 「コウ、頼むぞ!」 「へいへい…」 二人は扉の足もとにふせて隠れていた。扉に小窓があるため、何もない所につっ立っているよりはマシではある。が無駄でもある。扉がひとたび開かれれば、逃げることは不可能な場所にいるのだ。 とは言え、もう隠れる場所を探す時間はないだろう。鬼原が二階にあがってくる騒音が聞こえ始めたのだ。 「どこへ行きやがったー!」 その表情は鬼の如し。この顔を見た生徒が、恐れて『鬼原』などというあだ名をつけたのだろう。鬼原はその表情のまま、扉を調べている。鍵が閉まっている扉は鬼の力によって悲鳴をあげていた。 「だ 大丈夫だよな?」 「さぁな。」 そしてついに、鬼原が二人のいる部屋の前に立つ。部屋の中を一望してから、扉のくぼみに手をかける。 もちろん開く。扉が壊れていたとしても、鬼原より力のない生徒が開けれたのだ、余裕である。
/12ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2人が本棚に入れています
本棚に追加