2人が本棚に入れています
本棚に追加
能力者たち自身も持った理由も分からないと言っていて、げんにコウサクも使えるようになった時のことを覚えていない。
"小さい時から持っていた"程度の認識だった。
齢や記憶力によるだろうがたいていの大人、もしくは中学生以上なら自分が初めて立った時のことなんて覚えていないだろう。
その程度である。
コウサクは異能を異常だと考えていなかった。
国や環境によっては、能力者たちは軍事力に強制的に加えられたり、無意味にいじめられたり、隔離されたりする人もいる。
だがコウサクの周りの人たちは普通に接してくれるし、便利なことはあれど、不便なことは特に無かった。
それで満足だった。疎外されている人たちには悪い気もするし、カワイソウと同情の気持ちはあったが、自分にはどうする気も無ければ力も無い、だからどうしようもない。と考えているのだ。
確かに現実的に考えて普通では無い。
だからこそ普通を求めるのだ。
だからこそ平穏を欲しがるのだ。
だからこそ、日々が変わらないことに幸せを感じるのだ。
「おぉ、白神。『馬鹿』を見なかったか?」
「どうも、藤原先生。ソイツなら、空き教室で固まってるんじゃないんですか?もうじき逃げれるようになりますが。」
「そうか。感謝するぞ白神。体育の授業のときにはお前を見本として前に出してやろう。」
「結構です。」
だからこそ、めいいっぱい今を楽しむのだ。こんなくだらないバカみたいな話だって、振り返れば武勇伝にでもなるかもしれない。
だが事は、世界規模の騒動。坂の上から流された水の様にゆっくりと、だが確実に全てに染みわたるのだ。
こんな平穏が取り柄の町にも異常が起き始める。
非日常の上に成り立つ日常など、崩れて当然だったのだ。
最初のコメントを投稿しよう!