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「[発病:パンデミック]で麻痺毒を流し込んだ、体を動かすことも痛みを感じる事もないだろう。」
神威は近づき倒れているベルクを見下ろしながら言った。
「すいませんね、最後まで迷惑をお掛けして。」
とベルクから謝罪の声が聞こえ神威は驚いたのか一歩後ずさっていた。
「自我が戻ったのか?」
驚きながらも神威はベルクに聞く。
「えぇ、本能的に助からないと悟ったのでしょうかね、おかげで理性が戻りました。」
そう言って笑うがどことなく覇気が無い。
「そう言えば大事なことを言い忘れてました。」
ベルクは呟くように言う。
「大事な事って何だ?」
神威は膝を付きベルクの顔の近くまで近付いた。
「妹の名前を言い忘れてました。」
一瞬の静寂…
「……確かに聞いてなかったな。」
ベルクが言い忘れていた事に呆れながらも返答する。
「フフッ、私って意外と抜けてるんですかね?」
そう言って口角を上げ笑う。
「かもな、それより今言える内に言っておけ、死ぬぞ。」
そう刺した張本人は言う。
「それも…そうですね、妹の名前はミーナ、…ミーナ・リシュトと言います。」
ベルクは失血の性か言葉が途切れ途切れになってきていた。
「ミーナか、良い名前だな。」
「そう…ですかね、そう言っていただけると…名付け親の私も…うれしい……ですね。
ありきたりですが…フフッ…何故か眠くなってきま…した。」
ベルクは笑う、だがこんどは少し口角が上がるだけだった。
「あぁ、寝ろ寝ろ、約束は守ってやるよ、こう見えても約束は割りと守る方だからな。」
神威は投げ遣りに、だがベルクを気遣うように言った。
「意外です…ね、ですが……信じま…しょ……う………」
そう言い終わるとベルクは眼を閉じた、永遠に覚めぬ眠りへと。
「良い夢をベルク・リシュト、異世界で初めて会った人間…いや獣人、かな。」
神威は哀しそうな表情をしていた。
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