一章

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理由はすぐにわかった。 食料に寝床。 今の世界にこれ程重宝されるものなどない。 この小屋にここにあるオレたち家族の食料。 これを狙って奴らはやって来たのだ。 だけど幼いオレは恐かった。 天使とはまたべつの恐怖。 無表情の天使に比べ奴らは血に飢えた獣のような表情。 そして武器での威嚇。 母に抱かれ震えるオレ。 父は武器を持って構えていた。 家族を守る為に。 だけど父も武器を持っているといってもそれは水道管のような鉄パイプ。 そして奴らは金属バットやナイフやノコギリといった本格的なものだった。 それでも父は勇敢にも立ち向かった。 家族を守るその一心で。 だけど父は真っ赤な血飛沫とともに崩れ落ちた。 母はオレを連れ走った。 母はオレを逃がす為に自らを犠牲にした。 二人の死を目の当たりにしながらもオレは走ることを止めなかった。 立ち止まったらオレもまた死ぬことになるのだから。
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