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「こら。休みだからっていつまで寝てんのよ」
部屋のドアが思いっ切り開けられると同時に、聞き慣れた幼なじみの声がする。
「明日から学校始まるんだからいい加減生活習慣直しなさい」
「あと5分…」
幼なじみの忠告を無視し、俺は布団にくるまる。
が、そこで引き下がるほど俺の幼なじみは甘くない。
「起きろって言ってんでしょうがー!」
と、勢い良く布団をはぎ取られた。
「グハッ」
布団にくるまっていた俺は、はぎ取られた勢いでベットから落ちた。
「イッテー。何しやがんだよ美咲」
「…」
いつもなら俺の文句に言い返してくる幼なじみの桜井美咲だが今は何故か無言だ。
「おい。聞いてんのか?」
「…」
落ちた時にぶつけた後頭部をさすりながら、再び話しかけるがまたしても反応がない。
「お―――」
「あんた誰?」
おい。と続くはずが美咲の言葉に遮られる。
「は?俺だよ俺。稲葉春樹」
「…新手の詐欺?さすがにそれは電話越しじゃないと無理があると思うわよ?」
美咲の言っている意味がよくわからん。
「まさか休み中に女を連れ込むなんて何考えてんのアイツ」
美咲は頬を少し赤らめながら怒り出した。
「は?女ってどこにいんだよ?」
俺の質問に美咲は指を指して答える。
その指先は俺に向かっている。
念のため後ろを振り向いてみるが、そこにあるのはさっきまで俺が寝ていた空のベット。
ってことは俺を指してるんだよな…
「あ゛、そうだった」
今の俺は女になっちまってんだった。
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