噴水、公園。

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 花は吹雪のように散り葉桜が鮮やかな五月。日差しは肌を突き刺すほどでは無いものの、長袖ならばじんわりと汗ばむ陽気の昼下がり。  日本人にはあまり似合わないような明るい茶色に染めた、いがぐり頭の少年と、黒々とした艶やかな髪が肩まで伸びている少女が噴水のある公園のベンチに座っていた。 「どうしました。何やらうんざりとしたような顔ですが」  少女は体が潰しているスカートの裾をキュッと掴みながら、少年の方には向かず、数十メートル先にある噴水を見つめながら淡々と質問する。 「半袖でくりゃあ良かったなぁって」  うっすらと濡れる鼻の下を拭いながら少年は答えた。力を入れたく無いのか体を背もたれに預け、目を細めながら空を見上げている。 「そうですか。ですが後悔しても意味はありませんよ。後悔先に立たずです。それとも少年漫画の筋肉馬鹿さんよろしく布を引きちぎって無理矢理半袖にしますか」 「…………馬鹿か」
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