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少年は「わかった」と呟き、ベンチから立ち上がる。木製のそのベンチはキキッと短い軋む音を鳴らした。
「ここらにクレープ屋なんてあったか?」
「近くにデパートがあったでしょう。そこの一階にあるフードコートにありますよ」
「良く知ってるな」
少年は苦々しい笑いに片方の口角を引き上げながら言う。しかし、少女は何を勘違いしたのか、無い胸を張りながら「してやったり」といいたげな顔をする。
「褒めても何もでないのです。えっへん」
「そうか、お前も馬鹿だったのか」
「心外です。ドリンクも付けて貰わないと立った腹がおさまりません」
「おさまらないのは腹の虫だ。昼飯は食ってきただろうに」
「あう。スイーツは別腹なのですよ相変わらずわかってませんね。なんですかその頭、ボールですか蹴りますよ」
「ならば髪を伸ばす」
「私は『てんどん』ってのが嫌いなのです」
聞き慣れない単語に少年は首を傾げた。
「なにそれ」
「あら、わからないのですか。リフレインですよ。ルフランやリフレーンとも」
「………………」
優しく教える少女に、少年は顔を背ける。
「ありゃま。なんという事でしょう」
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