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どんよりと重い空。
ペダルをこぐ足は軽快…な訳がない。
「何だよこの雪は!」
雪はボタボタと音を立てて降り、向かい風は凶器のように肌を突き抜ける。
「とにかく早いとこ行こ…」
家から学校までは自転車で1時間、雪が積もれば1時間以上。
電車もバスもないこのクソ田舎じゃ頼りはこのオンボロ自転車のみ。
一心不乱にペダルをこいだ。
しかしこの時間になっても他の奴らの姿が見えない。
頭によぎった嫌な予感はとりあえず無視して教室へ向かった。
「うぃーっす!」
勢いよくドアを開ければ…見慣れた後ろ姿の女子が一人。
「びっくりした…おはよう」
「ありゃ、大澄だけ?」
大澄とは3年間同じクラスだけどまともに話すのはこれが初めてだった。
「そうみたい。こんな雪だからみんなゆっくり来るのかもね」
急いで来た自分がバカみたいだ。
「しかし大澄早ぇな。何してんだ?」
机の上を覗き込むと原稿用紙やら写真やらが散乱してた。
「卒業文集。私、文集委員だから」
「あ、そう」
…間がもたない。
早いとこ誰か来ねぇかな。
窓の外は相変わらずひどい雪だ。
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