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「和田君、高校どこ行くの?」
冷えたつま先をストーブであっためてると、ふいに大澄が話しかけてきた。
「北高だけど?」
「じゃあ、高校行っても剣道続けるんだね」
「まーな。つーか剣道したいから高校行くようなもんだし」
自慢じゃないが去年の選手権で2位という輝かしい成績を残している。
どーよ?
…まぁ、勉強の方はサッパリな訳だが。
「大澄は付属だろ?」
頭の良い彼女はもちろんレベルの高い高校へ行くと思ってたから当然のように言った。
「私は西高。家から近いし」
「西高ぉ?バカでも入れる学校じゃねーか」
こう言うと西高へ行く俺の友達は怒る。
バカに言われたくねぇよ、って。
「うち貧乏だから」
あ、そうだった。
大澄の親父さん、去年亡くなったんだっけ。
「悪い」
「ううん、気にしないで」
目を伏せて微笑む大澄。
大澄のこの雰囲気が落ち着かなくさせる。
何ていうか、ふんわり…やらけぇ感じの。
「あ、卒業作文書いてないの和田君だけよ?早く書いてね」
「へーいへい」
作文っつっても、何書きゃいいのかわかんねぇんだよな…。
「お前どんな事書いたんだよ」
大澄は何故か顔を赤くして答えた。
「…入学式の時の事」
入学式の事なんてこれっぽっちも覚えてねぇや。
「忘れられない素敵な思い出なの」
そうやってはにかむ大澄が何だか淋しそうで…つい。
「思い出ってのは忘れたくなくても忘れられないもんだよ」
何でこんな事言ったのかわからないけど、彼女は嬉しそうに頷いた。
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